相続対策

まず、ご自身の相続税額がいくらぐらいになるかを概算で良いですから算出してみてください。そこから以下の対策を利用した時にどのくらい、その相続税額が少なくなってゆくかをご覧になってください。

Ⅰ、贈与税の基礎控除を活用した対策

この対策は毎年コツコツと年月をかけて、ご自身の財産を配偶者、子供、孫等に贈り続ける対策です。従って現金の贈与の場合はご自身の通帳から、子供等の通帳に預金の移動があった事になりますので、日常使用している子供等の通帳に預金が振込まれ、その通帳を子供等がご自身の「銀行印」を利用して使うことになります。また、贈与があった事を証明する贈与契約書の保管、長い年月を掛けての贈与となりますので、書類の紛失をさけるため、1,000円でも良いですから、税務署に贈与があった事の証明として納付することをお勧めします。長い期間と人数により相続税額が次第次第に減額してゆきます。実行しますと、意外に効果の高い事が分ってきます。是非、実行してみてください。

以下に、贈与税の基礎控除額110万円を超えた贈与税の速算表を表示いたします。

20才以上の者への直系尊属からの贈与

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

上記以外の者への贈与

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

Ⅱ、配偶者控除額2,000万円を活用した対策

配偶者が女性の場合、男性にくらべ平均寿命が5年以上長くなっております。財産を持つご自身が男性で不幸にもなくなった場合、残された配偶者である女性にとって大変な老後の不安をかかえる事になります。夫の生前に「居住用の不動産」または「居住用不動産を取得するための金銭」の贈与が夫から配偶者である妻になされたならば、妻の老後の不安の一部でも助けることになります。是非、婚姻期間が20年以上で余裕のある方はこの制度を検討してみてください。かなりの相続税額の減額になります。

Ⅲ、駅近とか繁華街商業地に近い場所に貸家、アパート等を個人で所有しあまり空室の心配のない人の対策

一般的に活用されている対策でその人の持つ建物等と土地を分けて考え、建物等については個人所有のため毎年減価償却を実施して申告していると思われますが、年々実施していますので税務署に提出している残存価格は年月が過ぎるほど下がってゆきます。そこで家族を株主とした法人を設立し、その建物等を残存価格でその法人に売却し、土地については個人所有のままとし、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出するのです。ここでの要点は今迄の個人の家賃収入が家族が法人会社の役員と株主になることにより、家族に役員報酬が合法的に入り、又は株主である事から配当等の対策により、一層個人から家族への所得移動が発生し、相続税対策となるものです。

Ⅳ、生命保険を活用した対策

相続により生命保険金を受取った相続人は法定相続人×500万円=合計額については非課税です。

生命保険を一般的に活用する方法として被相続人を父とした場合、父が子供等に現金を贈与しその資金で父を被保険者とし子供等が受取人になる例もありますが、父の感情を考えますと複雑なものになります。また中には毎年の贈与となりますので、途中で個人的に利用したりして思うようにはいかないものです。この解決策として、父がご自身で保険料を負担する契約を結び受取人を子供等にする例が増えてきています。この場合、保険の種類を終身保険とします。また、二次相続を考えて保険料を父が負担し夫婦で終身保険に加入する例もあります。

Ⅴ、中小企業のオーナーさんが所有する自社株対策

自社株は取引相場のない株式と評価され、業績の良い会社の株式は高額な評価額となり、納税に苦労することになります。特に毎期ごとの決算書の純資産額をチェックすることをお勧めします。自社株の評価は「純資産価額方式」と「類似業種比準価額方式」とから成り立っていますので、それぞれの方式について検討します。

「純資産価額方式」の引下げ対策

(1)生前退職金の活用
(2)収益部門の切り離し
(3)不動産の購入により評価減の活用
(4)内部留保の社外流出など

「類似業種比準価額方式」の引下げ対策

この方式はその会社の事業内容が類似する上場企業の株価を基にして、その会社の一株 当たりの「配当金額」「利益金額」「純資産価額」などを基に計算します。

(1)創立記念配当等の特別配当の活用
(2)一株当たりの「配当金額」一株当たりの「利益金額」一株当たりの「純資産価額」の3要素の組合わせを活用した連年対策。

特に創立記念配当等の配当は無配当扱いになりますので、株価に影響を与えず現金を手に入れる事が出来ます。また、会社の状況が良くなく赤字になった時や、不良債権が大きく発生した時、または景気の変動で評価対象の「事業内容が類似する上場企業の株価」が大きく下落した時などをとらえて子供等に株式の贈与をしますと相続対策となります。